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「日立家電から撤退」の噂に隠された真相とは?

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一家に一台ぐらいはある「日立家電」ですが、
ネットなどでは「日立は家電から撤退した」といった噂を見聞きすることがあります。

では本当に撤退してしまっているのかなど、日立家電について詳しく見ていきましょう。

     
   

日立は家電事業から撤退していない

ネットなど一部で「日立は家電から撤退した」と言われていますが、
実際には撤退しておらず現在も日立は家電を製造・販売しています。

一般的に日立と言われているのは「日立製作所」という会社で、
日立家電も日立製作所が元々は製造・販売していました。

しかし現在は家電部門を分社化、日立製作所の完全子会社である「日立グローバル
ライフソリューションズ」が日立家電を製造・販売する形に変わっています。

日立製作所は現在家電は作っていませんが、完全子会社が日立家電を
作り続けていますから日立は家電事業から撤退していないのです。

日立家電の国内生産も継続

日立は国内の自社工場での家電の生産も継続しています。

販売価格を抑えるために人件費の安い海外で家電を作って日本で販売する
家電メーカーもありますが、日立家電は国内生産です。

日立製作所が家電を生産していた時には国内にいくつか自社工場がありましたが、
現在は栃木県の栃木工場と茨城県の多賀工場の2か所となっています。

ただし家電に使われているパーツは海外から取り寄せており、
一部の低価格帯モデルは海外でOEM生産をしています。

日本で作っている日立家電も中身には海外パーツが使われており、
一部モデルは日本で作られてもいないので純国産家電とは言えません。

しかし海外生産モデルはともかく、パーツまで国産のものを使った家電は
日立以外のメーカーでも探すのが難しいです。

現在製造されている日立家電

現在日立が取り扱っているのは
 ・キッチン家電
 ・生活家電
 ・美容家電
 ・空調家電
 ・住宅設備
などです。

キッチン家電は冷蔵庫や炊飯器、オーブンレンジ、IHクッキングヒーターなどで、
特に独自技術が詰め込まれた冷蔵庫は現在でも高い人気があります。

生活家電は洗濯機や掃除機、布団乾燥機などで、
いわゆるお掃除ロボットも作っています。

また洗濯機は全自動だけでなく、他メーカーが完全に撤退した洗濯槽と脱水層が
分かれている二層式モデルも作り続けているのです。

二層式洗濯機は家庭では使われることが少なくなったもののクリーニング店で
使われており、日立の二層式洗濯機にはまだまだ需要があります。

美容家電はドライヤー、空調家電は空気清浄機や除菌脱臭機、加湿器、
住宅設備は家庭用エコキュートや火災警報器です。

日立はもうテレビとエアコンは作っていない?

日立はテレビやエアコンのイメージが強いかもしれませんが、
現在日立本体としてはテレビもエアコンも作っていません。

日立のテレビと言えばHDD内蔵でレコーダー機能が付いている「Wooo」が有名で、
ブラウン管テレビから薄型テレビへの移行時に使っていた人も多いはずです。

しかし2012年にテレビ事業は日立グローバルライフソリューションズの前身
日立コンシューマーエレクトロニクスに移管されて、国内生産が終了します。

海外でのOEM生産でテレビ事業自体は継続していたものの、
2018年にテレビ事業から撤退したため現在は日立ブランドのテレビはありません。

日立のエアコンと言えば「白くまくん」で、
現在も有名女優を起用したTVCMが放映されています。

ただ現在白くまくんを作っているのは日立グローバルライフソリューションズではなく、
ジョンソンコントロールズ日立空調という会社です。

アメリカのジョンソンコントロールズと日立グローバルライフソリューションズの
合弁会社で、ジョンソンコントロールズの株式比率が50%を超えています。

日立ブランドで日立と全く関係がないわけではないですし、
白くまくんの販売は日立が行っています。

しかし白くまくんを作っているのは実質的にはアメリカメーカーで、
厳密には白くまくんは日立本体の製品ではなくなってしまっているのです。

電気シェーバーも日立は作っていない?

日立の電気シェーバーを使っている男性も多いかと思いますが、
日立は電気シェーバー事業からも事実上撤退しています。

日立ブランドの電気シェーバーは日立マクセルという日立製作所のグループ会社が
作っていました。

ちなみに日立マクセルのマクセルはカセットテープやCD-ROMといった記憶媒体、
乾電池などでお馴染みのマクセルです。

しかし2017年に日立マクセルが日立グループから独立してマクセルとなったことで、
日立ブランドの電気シェーバーの製造は事実上終了しました。

実際に日立公式サイトの電気シェーバーのページを見ると、ロータリーシェーバーは
「在庫限り」となっています。
(参照:https://kadenfan.hitachi.co.jp/shaver/rotary/)

往復式シェーバーは現在も日立ブランドで製造・販売していますが、
こちらも海外でのOEM生産となっているので日立が作っているわけではありません。

日立家電の強み

日立家電の強みは何といっても「省エネ性能」です。

エネルギー価格の高騰で電気代も年単位どころか月単位で上がる状況の中、
各家庭では電気代を少しでも抑える工夫が求められています。

しかし生活の中で家電を使わないわけにはいきませんから、
普通に使っても電気代が抑えられる省エネ家電の需要が高まっているわけです。

他メーカーでは機能を省いたり落とすことで省エネを実現しているケースもありますが、
日立家電は高性能なのに高い省エネ性能を備えています。

月々の電気代いわゆるランニングコストを日立家電を使うだけで下げられるのです。

長く使う家電ほど省エネ性能が高いものがお得なので、冷蔵庫やエアコンなど
使用頻度が高くて買い替えサイクルの長いものは日立家電がおすすめです。

独自技術が詰め込まれている

他メーカーに先駆けて独自技術が詰め込まれているのも
日立家電の大きな強みとなっています。

例えば、全自動洗濯機で当たり前となっている液体洗剤や柔軟剤が
自動で投入される機能を最初に搭載したのが日立とされています。

中に入っている食品や飲み物の量をアプリでチェックできるスマートストッカーという
冷蔵庫や中身が目視できるようにカメラが付いた冷蔵庫もあるのです。

特にカメラ付き冷蔵庫は後続メーカーが出てきていますし、
後付けできるカメラも登場しています。

エアコン内部の通風路やフラップなどにステンレスを使う「ステンレス・クリーンシステム」、
熱交換器やファンの汚れを凍らせて洗い流す「凍結洗浄」も日立の独自技術です。

独自技術が詰め込まれた日立家電を使うことで、
家電の手入れにかかるちょっとした手間が省けて時間に余裕が生まれます。

日立はモーターの性能が高い

日立家電が高性能なのは「モーター」に因るところが大きいです。

日立製作所の完全子会社である日立産機システムがモーターを作っており、
国内ではトップクラスの性能を誇ります。

モーターが回転することで電力を生み出すのですが、熱などで一部が失われるため
モーターが生み出した電力の全てが家電を動かすためには使われません。

日立のモーターは電力損失を最小限に抑えて、
モーターが生み出した電力を最大限家電を動かすために使えるようにしているのです。

モーターの電力損失を抑えることは、家電の熱の発生を抑えることになります。

家電は熱に弱く、モーターで発生した熱が内部にこもってしまう故障の原因と
なってしまいます。

日立のモーターは熱の発生を抑えられるので、
故障のリスクが低くなって家電が長持ちしやすいのです。

また電力を最大限使えるのでモーターの稼働も抑えられ、
モーターの劣化による故障のリスクも抑えられます。

日立製作所は元々鉱山の付属工場で、鉱山で使う「電動機」を完成させたことで
会社として独立しました。
(参照:https://www.hitachi.co.jp/about/corporate/history/1910.html)

電動機を作る会社として日立製作所は創業したので、
モーター開発には一日の長があって高性能なものが作れるというわけです。

日立が家電から撤退した言われる理由

実際は撤退していない家電事業から日立が撤退した言われる大きな理由の1つが
「テレビ事業からの撤退」です。

日立はHDD内蔵でレコーダー機能を備えた薄型テレビ「Wooo」の製造・販売を停止、
テレビ事業から撤退しました。

冷蔵庫や洗濯機、エアコンといった白物家電に比べると、
テレビは買い替えサイクルが早くなっています。

家電量販店などで店員さんから「日立はテレビを作らなくなった」と聞いて、
「家電事業から撤退した」と勘違いするケースが多いのではないでしょうか。

家電事業の売上比率の低下

日立グループの総売り上げに占める家電事業の割合が大きく低下したことも、
日立が家電事業から撤退した勘違いされる理由と考えられます。

元々日立グループの総売り上げに占める家電事業の割合は高くなく、
日立にとって大きな転換点となった2008年でも13%程度でした。

しかしそれが2022年度にはさらに大きく下がって、
総売り上げに占める家電事業の割合は4%程度となっています。

2008年にリーマンショックの影響もあって日立グループは大きな赤字を抱えます。

経営を立て直すために資金と人材を集中させる事業を選択することになり、
 ・デジタルシステム&サービス
 ・グリーンエナジー&モビリティー(鉄道や送配電設備)
 ・コネクティブインダストリーズ(産業機器)
の3事業を柱とします。

家電事業は縮小されることになり、結果的にテレビや電気シェーバーからの撤退、
エアコン事業の売却などに繋がります。

日立グループの中で家電事業が大きく縮小されたことで日立ブランドの家電を
見かける機会が少なくなり、「日立は家電から撤退した」と勘違いされたというわけです。

     
   

まとめ

ネットなどで「日立は家電から撤退した」という噂を見聞きすることがありますが、
実際には日立は家電事業から撤退はしていません。

ただ日立グループ内で家電事業は縮小されており、
テレビや電気シェーバーなど日立ブランドから姿を消した製品もあります。

しかし洗濯機や冷蔵庫は現在もトップクラスの性能を誇っており、
「技術の日立」は健在です。

   
   

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